2023/6/18 第2回18期生 まち歩き 前半

鈴木研究室18期生は、6月18日にみなとみらい、関内、元町、山手エリアでまちあるきをしました。この記事では、まちあるきの前半(地図上の6番まで)について書いています。次の記事では、後半(地図上の7番から)について書いていますので、そちらもご覧ください。私たちが歩いたルート上にあった重要な場所をいくつか紹介した後に、前半のまちあるきを通して学んだことをまとめています。私たちが歩いたコースを一緒に歩くような気持ちで読んでいただけると嬉しいです。 

1.ドックヤードガーデン

ランドマークタワーの東に位置する重要文化財のドックヤードガーデン(写真1)。日本では最も古い商船用石造りドックである「旧横浜船渠第2号ドック」を復元して生まれたのが、このドックヤードガーデンです。ドックを保存するにあたり、使われているのが「動態保存」という方法です。「動態保存」とは、当時どのように使っていたかが分かるように保存することを言います。例えば、写真2のように船をドックの奥まで引き寄せる際に使われたパーツも残されており、使われていた当時のことが想像できます。また、重要文化財であるのにも関わらず、コンサートやプロジェクションマッピングが行われるなど、人々の交流の場としても使われており、意外性も感じられるでしょう。

2.汽車道

汽車道は1911年に初代横浜駅(桜木町駅隣接した東横浜貨物駅)から新港ふ頭の旧横浜港駅まで開通した臨港線の廃線跡を利用して、歩行者用プロムナードとして整備されました。臨港線の時代から架かっていた鉄橋に加え、レールや護岸も保存されています。その三つの鉄橋のうち、港三号橋梁と呼ばれる他の二つと比較して小さいイギリス製の鉄橋はレールが走っている部分からずらして保存されています。これはこの橋が北海道炭鉱鉄道から移設されて保存されているものであり、臨港線とは関連がないからだそうです。このように実際に活用されていた時代のイメージに間違いが生まれてしまわないように考えられている点が印象的でした。ただ歩行者用プロムナードとして整備してしまうだけでなく、遺産が活用されていた時代を想像できるように考えて整備されているところに横浜市のまちづくりへの考えの深さを感じました。

3.ハンマーヘッド

これはハンマーヘッドクレーンです。これは、新港ふ頭の整備に合わせて設置された日本初の荷物専用クレーンです。2001年までの88年間貨物の積み下ろしに使われました。よって、ハンマーヘッドは横浜港の近代化を支えた重要な遺産であります。現在も稼働可能な状態で保存されていて、当時日本に導入されたクレーン5つのうち現在残っている3基のうちの1つです。

まちあるきで、この地を訪れたときに私たちが感じたのは、この横浜の港街らしさを感じられる風景を、人々がより楽しむために、ハンマーヘッド周辺の空間を改善することが出来るのではないかということです。ハンマーヘッド周辺にある駐車場は本当に必要なのか。など、日常生活ではあまり着目しない点についても改めて考えることが出来ました。

4.赤レンガ倉庫

赤レンガ倉庫に使われている煉瓦はところどころきれいなものが混ざっていました。それは歴史的な本物らしさを失わせないように、あえて新しい部材と古い部材をわかりやすくしているとのことでした。また汽車道のプロムナードから続く線路が、当時海外との唯一の玄関口であった旧横浜駅のプラットフォームまでつながっていたり、税関の跡地は地盤沈下した状態でそのまま保存され、柵が目立たないものになっていたりと、工夫して歴史の保存がされていました。一方で赤レンガ倉庫の中は狭く、混みあっていたので歩きづらいという意見もありました。

5.象の鼻パーク

象の鼻パークは、1859年の横浜港の開港と同時に設けられました。始めは、2本の突堤を設けただけのものでありましたが、その後、防波堤が延ばされて、「象の鼻」のような形状になりました。象の鼻パークには、開港150周年の再整備の際につくられた象の鼻テラスと呼ばれる無料休憩所があります。象の鼻テラスは誰もが自由に過ごすことができ、アート体験などもできます。よって、象の鼻テラスは、文化的創造界隈拠点としての役割を持っています。

6.日本大通

続いて日本大通です。ここは横浜スタジアムの近くからまっすぐ一直線に延びているイチョウ並木が美しいこの地区を代表する街路です。この大通りはR.H.ブラントンによって設計がなされ、1872年に大部分が完成した日本初の西洋式道路としてつくられました。この地はかつて大火災に襲われた過去があり、それを契機として防火道路として幅12mの車道、左右に3mの歩道、そして植樹帯9mを設けた36mの広い道路、日本大通りが設計されたのです(2002年に再整備)。隣接する建物には横浜情報文化センター(旧横浜商工奨励館)や『キングの塔』として有名な神奈川県庁舎などの歴史的な建造物・景観を活かした場所が見受けられます。そして新築する建物にも横浜の歴史的景観を保全するために景観的配慮が求められていたり、大通りのそのゆったりとした公共空間を生かした取り組みとして車道制限をして歩行者空間として利用するイベントやオープンカフェを歩道に展開する活動などが行われている公共空間の柔軟な使い方がみられる街路です。道路の道幅を活用した歩行者空間の創生や歴史的な建物を意識して残そうとする横浜の方向性がはっきりと感じることができた街路でした。

今回、みなとみらい・関内・山手のまちあるきをして、印象に残ったのはいたるところに横浜の開港都市としての歴史が保存されていると同時に、自然を感じられる開放的な空間にされていることです。汽車道には線路が残されていたり、赤レンガ倉庫や山下公園の中にはかつて使われていたものの展示がいくつも置いてあったりと、横浜の歴史を学べる機会が散りばめられていました。また開放的な水辺の空間や、広い歩道と並木によって質の高い歩行者空間が形成されており、自然と足が進む歩きやすいまちだと感じました。

 また、横浜の都心プロムナードには山下公園への目印として市民から募集した絵がデザインされた絵タイルが歩道に埋め込まれています。また元町のショッピングストリートは商店街独自でルールを定め、魅力的な空間を形成していました。市民がまちづくりに直接かかわることでその街に対して親しみが生まれ、再び市民自ら魅力向上のために行動することにつながります。市民主体で動いていくことがまちにとってとても大切だときづきました。

 最後に、実際に歩いてみたからこそ気づいたことが沢山ありました。特に印象に残った場所は、ナビオス横浜の建物の、道路を吹き抜けた空間から見える赤レンガ倉庫です。汽車道から、赤レンガ倉庫に向かって歩いて行く道において、ナビオス横浜が景観を妨げないような建物設計になっていることで、私たちが景観を楽しみながら歩きやすい道になっていました。さらに、海に向かって建物の高さが低くなっていたり、建築物の色の調整がされていたりなど、実際に地図上だけでなく、歩行者の目線に立ってみたことで気づけた横浜の良い点が沢山ありました。

 いかがでしたでしょうか。今回みなとみらい、関内、山手地区をゼミとして歩いてみて、ただぼーっと歩いてみるだけでは知ることができない歩行者視点や歴史的なバックグラウンドなどの開発における背景や、横浜だからこそ活かされる歴史的な建築や自然の調整が見えたまちあるきでした。よく見慣れた既知の風景でも、開発サイドから風景を見直すことで新しい発見や見方ができることを実感しました。

 あなたがいつもなにげなく通るような駅やまちも注意深くみてみたり歴史について調べることで新たな発見ができるかもしれません。

執筆者  江原凛 深谷雪乃 後藤彩奈 伊藤晃 赤澤昇

鈴木伸治 研究室

横浜市立大学 | 都市デザイン Yokohama City University Urban Design Laboratory